お腹回りにお肉がたっぷりついていて、何とかしたい!と思っている人はたくさんいますよね。
そんな人にとって「内臓脂肪を減らす薬」というのはとても魅力的です。
しかし、内臓脂肪が薬やサプリメントで簡単に落ちるの?という疑問もわいてきませんか?
内臓脂肪は比較的簡単に落とすことができるといわれていますが、それならなぜお腹回りで悩んでいる人がたくさんいるのでしょうか。
今回は、内臓脂肪を減らす薬の効果について検証します。
このページの目次
内臓脂肪の蓄積を放っておくと多大なリスクに
まずは、お腹回りにつきやすい脂肪としてよく知られる「内臓脂肪」と「皮下脂肪」の違いを簡単に説明しましょう。
その名のごとく、内臓脂肪とは内臓の周りに脂肪がついているもの、皮下脂肪は皮膚の表面に近い部分につく脂肪のことです。
ウエストのくびれが多少なりともあり、お肉をつかめるのが皮下脂肪、ウエストがなくなってお肉がつかみにくいのが内臓脂肪です。
横から見ると内臓脂肪と皮下脂肪の違いはこんな感じで、特に男性の肥満によく見られるタイプです。
いわゆる「メタボ」といわれるのは内臓脂肪型のほうで、この脂肪は飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足、栄養の偏りなどが原因です。
女性に多い皮下脂肪の場合も摂取カロリーが高いことと運動不足が原因ですが、女性の場合お腹回りに子宮があるためそれを守ることと、エネルギーを備蓄するという役割もあると考えられています。
内臓脂肪は皮下脂肪に比べると溜まりやすいものの、比較的簡単に落とせるといわれており、日常生活を改善すれば脂肪が燃焼し、減らすことができます。
とはいえ、実際には減らすことができず悩んでいる人は少なくありません。
内臓脂肪は、メタボ健診で必ずチェックされるほど健康被害のリスクが高いです。
多くの内臓脂肪肥満の人は高血圧・高血糖・脂質異常(高脂血症)の傾向があり、放っておくと動脈硬化や糖尿病、心筋梗塞などを引き起こします。
調査によれば、内臓脂肪に高血圧・高血糖・脂質異常のどれか1つが加わると心筋梗塞などのリスクが10倍、2つ以上だと30倍になるといわれています。
このように、内臓脂肪を放置するといずれ命を失うことにもなりかねないのです。
内臓脂肪を減らす薬ってどうなの?効果は?
内臓脂肪を放置しているうちに、健康診断で血圧や血糖・コレステロール・中性脂肪値が高いといわれるようになってきます。
最初に指摘された時点で食生活を見直せば良いのですが、多くの場合、「まあこの程度なら…」「仕事が忙しいから…」と無視してしまいます。
すると毎年健診するごとに数値が悪化してしまい、あわててTVなどで宣伝している「内臓脂肪を減らす薬」に飛びつくことになるのです。
内臓脂肪を減らす薬で簡単に手に入る薬といえば、漢方薬です。
TVで盛んに宣伝しているナイシトールやコッコアポAなどは、商品名が違っても「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」という漢方薬で、「黄帝素問宣明論方」という1172年発行の中国の医学書に出ている処方です。
防風通聖散は18種類もの生薬を配合した漢方薬で、特に体内にこもった熱を追い出す作用があります。
こもった熱の原因が脂肪なので、脂肪を分解・燃焼させることで熱を下げ、毒を排出するのです。
また、このタイプの人は便秘や排尿困難を伴うことが多いため、便通を良くし利尿効果のある成分も配合されています。
防風通聖散以外に内臓脂肪を落とすといわれているのは、同じく漢方薬の扁鵲(へんせき)のほか、糖タンパクのラクトフェリンやヨーグルトに使われるガセリ菌SP株などがあります。
どれにも一定の効果はありますが、すぐに効果が現れるというものではありません。
半年~1年の長いスパンで飲み続けることが大切です。
内臓脂肪を減らす薬に関する口コミをチェック
では、内臓脂肪を減らす薬やサプリメントの評判はどうでしょうか。
代表的な商品や成分をチェックしました。
<防風通聖散>
・食事制限はせず、食べる時間だけ注意したら、毎日100g以上減った
・医師に勧められたので飲んでみたら、スルッと体重が落ちた
・便秘が解消し、むくみが減った
・トイレに行く回数は増えたが、体重は変わらない
・腸の動きが活発になった反面、ガスが溜まりやすくなった
・お腹がゆるくなり、1ヶ月で1キロ減った
・お腹回りは変わらないが、背中の肉が減って後ろ姿がきれいになった
・最初は便通が良くなったが、段々効果がなくなった
・2週間飲んでみたが、あまり効果はなかった
・便秘がひどくなった
・下痢が止まらず、使用を断念した
・ニオイがきつくて飲むのが大変だった
漢方薬は「証(しょう)」というものがとても大切です。
証とは体質のことで、身体の中に熱がこもっているか、冷え性か、便秘しやすいか下痢しやすいか、声は大きいか小さいか、脈は早いか遅いか、といったことを総合的に調べ、その人の体質を割り出します。
そのため、防風通聖散に「証」が合っていると良い結果が出ますが、合わない場合下痢になったり、便秘がひどくなったりといった副作用が出やすくなります。
<ラクトフェリン>
・1年飲んで7キロ減った
・半年以上飲み、太りも痩せもしなかった
・便秘は多少解消したが、体重は減らなかった
・便秘の友人は快便になったと言っていたが、私は特に変化がなかった
・体重にそれほど変化がないので止めたら太り出し、また飲むと落ち着いた
・お腹が張ってしまい、苦しくて続けられなかった
・電話注文の際に、オペレーターから「飲んでも痩せない」とはっきり言われた
ラクトフェリンは母乳にも含まれるタンパク質の一種で、メーカーのライオンによると、内臓脂肪が8週間で平均12.8㎠低減したということです。
しかし、牛乳由来なのでアレルギーの人は摂取できないこと、マルチトール(還元麦芽糖)やラクチュロース(オリゴ糖)、デキストリン(食物繊維)といった、ラクトフェリン以外による効果の可能性があること、といった心配点もあります。
これらの成分はお腹を緩くするため便秘の解消には役立つものの、人によってはお腹が張ることがあります。
<ガセリ菌SP株>
・便秘に良いと聞いて始めたら、お通じが良くなり、風邪も引きにくくなった
・3ヶ月以上運動しながら飲んでいたが、体組成計で見ると内臓脂肪だけ減らなかった
・便通は良くなったが、1年飲んでも体重に変化はなかった
・飲むとお腹が痛くなる
ガセリ菌SP株はヨーグルトやサプリでよく使用されています。
雪印の研究によると、12週間で内臓脂肪が平均約6㎠低減したということです。
しかし、これもラクトフェリンと同様乳製品なのでアレルギーが起こりやすいこと、スクラロースなどの人工甘味料には肝臓や卵巣異常の原因となる可能性があるということから、あまり長期に渡って飲まないほうが良さそうです。
必須!内臓脂肪を減らす薬の選び方と注意点
内臓脂肪を減らすといわれている代表的なものは以上です。
このうちラクトフェリンやガセリ菌SP株の中には、特定保健用食品(トクホ)として認められているものもありますが、あくまで食品ですから作用は弱めです。
ただ、医薬品ではないため、下痢や便秘といった症状が出ることはあっても、大きな健康障害は起こりにくいです。
それに対し、防風通聖散は医薬品なので、「証」が合えば内臓脂肪を減らす強力なサポートをしてくれます。
しかし、便通を良くしたり体内の熱を除去したりする生薬が配合されているため、証が合わない場合、下痢がひどくなる、身体が冷える、むくむ、血行が悪くなるなどの症状が起こり、内臓脂肪は減っても皮下脂肪が増えてしまうこともあります。
最初に書いたように、女性の皮下脂肪は子宮を守る働きがあるため、漢方薬で身体が冷えてくると子宮を冷やして機能不全にならないようにと、皮下脂肪が溜まりやすくなるのです。
その他、防風通聖散に見られる副作用としては、かゆみ、発疹、動悸、嘔吐、腹痛、発汗過多、食欲不振、排尿障害などがあります。
これらの反応は証が合っていても起こる場合があり、これを「好転反応」といいます。
一時的に症状が悪化し、1~2週間すると収まって症状が改善され始めるのです。
しかし、証が合わない場合はこれらの症状がずっと続き、体調を崩してしまいます。
もう一つ注意していただきたいのが、お腹回りの脂肪が本当に「内臓脂肪」か、それとも皮下脂肪か、ということです。
防風通聖散はあくまで「内臓脂肪を減らす薬」であり、皮下脂肪は減りません。
これはラクトフェリンもガセリ菌SP株も同じです。
ぷよぷよしていてぜい肉が掴める場合、皮下脂肪の可能性が大です。
以下の画像を見て、自分のお腹回りがどちらかしっかり把握してくださいね。
左が内臓脂肪、右は皮下脂肪です。
もう一つ、これはあまりないことではありますが、子宮筋腫が大きくなってお腹が前にせり出してしまうことがあります。
体型としては洋ナシ型なのですが、筋腫があるため硬く、お肉がつまめません。
生理不順や不正出血がある場合は子宮筋腫の可能性もありますので、一度産婦人科で検査してもらうことをお勧めします。
さらに、胃下垂がひどいと胃がウエストの下まで下がり、ものを食べるとお腹回りがぷっくりしてしまうこともあります。
この場合もお肉をつまめないことが多いのですが、内臓脂肪とは違います。
漢方では内臓下垂は冷えや虚弱体質から来ているという考えがあり、防風通聖散では体調を崩してしまう危険性があります。
飲むだけじゃダメ!?薬の効果を高めるには
内臓脂肪はつきやすいものの、落としやすいといわれています。
代謝力をアップさせると燃焼しやすい脂肪なので、日常生活を見直すことで内臓脂肪を減らす薬の効果を高めることができるのです。
薬を飲むだけでもいずれ効果は出ますが、少しでも早く内臓脂肪を減らすために、以下のことをお勧めします。
<食生活の見直し>
・肉は牛肉より鶏肉をメインに
内臓脂肪がつきやすいのは脂っこいものが好きな人です。
脂肪が多いバラ肉や牛肉のサーロイン、リブはできるだけ避け、鶏肉や豚肉を中心に食べましょう。
部 位 | 脂質(100gあたり) |
---|---|
牛バラ肉(脂身付き) | 50.0g |
サーロイン(脂身付き) | 47.5g |
リブロース(脂身付き) | 44.0g |
牛肩ロース(脂身付き) | 37.4g |
豚バラ肉(脂身付き) | 34.6g |
豚肩ロース(脂身付き) | 19.2g |
鶏手羽先(皮つき) | 14.6g |
鶏もも(皮つき) | 14.0g |
豚もも(脂身付き) | 10.2g |
豚肩ロース(赤身) | 7.8g |
鶏むね肉(皮なし) | 1.5g |
鶏ささみ | 0.8g |
脂肪の点では鶏肉が最適ですが、豚肉には代謝をアップさせるカルニチンやビタミンB群が豊富なので、両方をバランス良く摂りましょう。
・揚げ物は控え、内臓脂肪減少に効果があるお茶を飲む
また、揚げ物を減らすだけでもかなり違ってきます。
すぐに止めるのは無理でも、自宅で食べる時はパン粉を減らして油をあまり吸わせないようにするとか、脂肪の吸収を抑えるお茶をたっぷり飲んだりして乗り切りましょう。
黒烏龍茶が有名ですが、プーアール茶も脂肪を分解する作用があります。
味にクセがあるのですが非常にミネラルが多く、血圧降下作用や血行促進作用、便秘改善作用などもあるので、内臓脂肪を減らすのにぴったりです。
杜仲茶や緑茶も効果的です。
・青魚を積極的に食べる
青魚に含まれるEPAは、コレステロールや中性脂肪の吸収を抑制し、血液をサラサラにしてくれます。
イワシ、サンマ、さばなどをたくさん食べましょう。
・お酢を調味料に使う
酢にはアミノ酸やクエン酸が多く含まれ、脂肪燃焼や疲労回復に効果があります。
また、酢酸には脂肪の合成を抑制する作用があり、内臓脂肪が増えにくい体質に変えてくれます。
血流を改善させる働きもあり生活習慣病のリスクが減るので、ぜひ摂ってほしい食材です。
<生活習慣を見直す>
・アルコールを控える
肝臓には食べたものを代謝する働きがあるのですが、お酒が入るとアルコール分解のためにフル回転してしまうため、それ以外のものを代謝できなくなってしまいます。
そのため、お酒と一緒に食べたものが内臓脂肪になりやすくなるのです。
また、麦や米から出来たお酒には糖質が含まれていますし、つまみは脂っぽいものが多いため、脂肪が溜まりやすくなります。
・タバコを控える
「タバコを止めると太る」といわれていたことがありますが、厚生労働省の調査によると、実際の統計では喫煙者ほど肥満が多く、特に女性にその傾向が顕著だそうです。
タバコには男性ホルモンを活性化させる働きがあります。
内臓脂肪型肥満は男性、皮下脂肪型肥満は女性が圧倒的に多いことから、男性ホルモンと内臓脂肪肥満には深い関係があるとされています。
そのため、女性でもタバコをよく吸う人は内臓脂肪が増えやすいのです。
<適度な運動を行なう>
内臓脂肪減少に効果があるのは、代謝を高める有酸素運動です。
ウォーキングや軽めのジョギング、エアロバイク、サイクリングなどを、自分の体力に合わせて行ないましょう。
有酸素運動は軽くても毎日行なうことで効果が持続するので、会社の行き帰りに一駅歩く、毎日必ず買い物に出る、などのちょっとした運動を積み重ねましょう。
自宅でできるラジオ体操も、有酸素運動として非常に優秀です。
なお、内臓脂肪を燃焼させるには20分以上続けないといけないといわれていましたが、最近の研究で短時間を細切れに行なっても効果はそれほど変わらないことがわかりました。
1日の総有機酸素運動時間を20~30分取るよう工夫してくださいね。
内臓脂肪は飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足、偏食、運動不足などが重なって起こるものです。
皮下脂肪はそれほど健康に悪影響を与えませんが、内臓脂肪は貯めすぎると生活習慣病を引き起こし、一生薬が手放せない人生を送らなければならないかもしれません。
そうなる前に内臓脂肪を減らす薬やサプリメント、代謝を高める食事や運動を組み合わせ、健康的な身体を取り戻しましょう。