「ダイエット」「漢方」と検索すると、必ずトップに出てくるのが「防風通聖散」をおすすめするサイトです。
そんなにすごいの?とつい期待してしまいますよね。
しかし口コミを読むと、ものすごく効果があったという意見と、期待外れだったという意見の両方があるのがわかります。
もちろんどんなダイエットも成功者だけではないけれど、成功者の「10キロ苦もなく痩せた!」なんて文章を読むと、失敗した人との差が気になりませんか?
今回は、防風通聖散のリスクとおすすめできない人のタイプについて、説明しましょう。
このページの目次
安易に考えてない?防風通聖散は単なる“痩せ薬”ではありません
TVCMやおすすめサイトを見ると、防風通聖散は飲むだけでダイエットできる「痩せ薬」だと思ってしまいますよね。
しかも、防風通聖散は医薬品で、医薬品というのは効果があることが証明されないと認定されないものですから、当然期待してしまいます。
しかし、メーカーサイトをよく読むと「〇キロ痩せる」「〇ヶ月で痩せる」ということをはっきり書いたところはありません。
「脂肪を落とす」「脂肪燃焼」「便秘解消」という効能ははっきり謳ってあり、それで「痩せる」ということをにおわせているだけです。
確かにぷよぷよお肉や便秘がなくなれば、かなり体重は減るでしょう。
しかし、漢方薬というのは体質改善によって痩せやすく太りにくい身体にしていくものですから、時間がかかります。
「あと3ヶ月で10キロ体重を減らしたい!」というのはかなり難しいのです。
しかも、飲むだけで簡単になくなるほど、私たちの皮下脂肪は甘くありません。
防風通聖散に配合された成分によって、便秘は通常1週間程度で解消できると書かれていますし、内臓脂肪は元々落ちやすいといわれています。
しかし、皮下脂肪は手術で切り取りでもしない限り、なくすのにとても時間がかかります。
内臓脂肪が多い男性に比べると、皮下脂肪が多い女性のほうが痩せにくいのです。
そのため、安易に防風通聖散を飲んで痩せようという考え方は、おすすめできません。
防風通聖散によって起こりうる副作用の症状
防風通聖散を安易におすすめしないもう一つの理由は、漢方薬には副作用があるからです。
漢方薬を”副作用がない”と案内しているサイトもありますが、それは間違っています。
漢方薬は体質とマッチしなければ、良い結果を出すことはできません。
それどころか、体質がマッチしていても、副作用が出ることがあるのです。
漢方は中国医学と日本の伝承医学を組み合わせたもので、日本独自の考え方や処方もたくさんありますが、基本は中国医学です。
中国医学では、「Aという部分を治すと、Bという部分も良くなる」という相生(そうせい)作用と、「Aを治すとCが悪くなる」という相克(そうこく)作用の二つが基礎の一つになっています。
漢方薬を配合する時に、Aを治しCに悪影響をできるだけ及ぼさないよう調整するのですが、どうしても副作用は出ます。
防風通聖散の場合、強力な下剤成分が配合されていますが、これによって大腸に負担がかかると肝臓に悪影響が及び、さらに胃まで悪くなる、という相克関係があるのです。
そのため、防風通聖散の説明書には肝機能障害や胃部不快感、腹痛を伴う下痢といった副作用の注意書きが必ず記載されています。
体質が合っていてもこのような副作用が出る可能性があるのですから、もし体質に合っていない場合、その症状はもっとひどくなります。
実際の使用者による副作用等に関する口コミ
実際には、どんな副作用が出ているのでしょうか。
ダイエット商品の口コミサイトからピックアップしてみました。
・下痢が止まらなくなり、外出が難しくなるほどだった
・下痢はするのに体重は全く変化がなかった
・汗の量がすごく増えたが、痩せなかった
・余計便秘になり、お腹が張った
・毎日何度も臭い便とおならが出る
・このせいかはわからないが、腕がものすごく痛くなり、めまいも出た
・飲むと必ず胃がムカムカしたり胃痛が出た
・急に立ち上がれないほどの疲労感が出て、動けなくなった
・飲むと激しい頭痛に襲われる
・急性肝炎になり、入院した
下痢症状が出るというのが多いのですが、中にはさらに便秘がひどくなった、という口コミも。
また、胃腸や肝臓に障害が出るなど、「相克関係」がはっきり出たケースもありました。
こんな人、こんな場合は防風通聖散を使わないで
口コミを読むと、下痢や腹痛など何らかの副作用が出てすぐに使用を止める人と、副作用が出ても数か月飲み続ける人がいるのがわかります。
CMなどで宣伝している効果はきっと出ると信じていたり、数千円出して購入したのだからもったいないと考えていたり、と飲み続ける理由は様々です。
しかし、下痢はその作用自体が体力を消耗させますし、せっかく食べた栄養がほとんど身につかず排出されてしまいます。
すると栄養不足から内臓の機能が低下し、体内で消化酵素や代謝酵素を生成することができなくなり、エネルギーが不足してしまいます。
脂肪の分解や燃焼にはエネルギーが必要ですから、下痢はしても脂肪は減らないままになってしまうのです。
また、下痢や胃腸の不具合などで栄養素が不足すると、身体は筋肉を分解してアミノ酸にし、栄養素の代わりにします。
脂肪より筋肉のほうが重いので体重は一瞬減りますが、筋肉は基礎代謝を上げるために非常に重要な組織です。
筋肉がなくなると基礎代謝が下がり、どんどん痩せにくい体質になってしまうのです。
ですから、下痢が止まらない、腹痛を伴う激しい下痢が起こるという場合は使用を中止し、医師や薬剤師に相談しましょう。
その他、合わない体質として以下のことがあります。
・元々下痢や軟便ぎみの人
・胃腸が虚弱な人
・食欲不振や嘔吐が起きやすい人
・病後の衰弱期や体力が消耗している人
・発汗量が多い人
・狭心症、心筋梗塞など循環器系に障害がある人
・高血圧の人
・腎障害や排尿障害がある人
・甲状腺機能亢進症の患者
このような体質の場合、副作用が出やすいので使用はおすすめできません。
効果が期待できるのは「実証」体質の人
漢方では、体質を「実証」と「虚証」に分けています。
字で何となくイメージが沸くと思いますが、「実証」とは何らかの不要物や有害物質が体内に溜まって排出する機能が追い付かない状態、「虚証」とは身体自体の生命力や機能が低下していて排出する力がなくなっている状態のことを指します。
この分類でいくと、硬くて張り出す内臓脂肪は実証、ぷよぷよ柔らかい皮下脂肪は虚証ということになります。
内臓脂肪は食べ過ぎ飲み過ぎが大きな原因で、消化吸収能力はあり必死に燃焼しているものの、それ以上に詰め込んで燃焼し切れなくなってしまったことから起こります。
そのため、実証の人は食事をしている最中からダラダラ汗をかいている人が少なくありません。
一所懸命脂肪を分解・燃焼しようと内臓が頑張っているのです。
皮下脂肪は、胃腸虚弱や栄養不足、運動不足などによって栄養の消化吸収ができず、エネルギーが不足して脂肪が燃焼できず体内に溜まってしまったものを指します。
そのため、虚証の場合食が細かったり、食べても消化機能が充分働かず胃もたれしたり下痢したりするタイプが多いようです。
その他、「実証」体質はこんな特徴があります。
・筋肉質でがっちり体型
・よく食べよく飲む
・動きが早く、活動的
・あまり汗をかかない
・顔色が良く、肌にツヤやハリがある
・呼吸は早く荒い
・声は大きくよく響く
・暑がりで、冬でも冷たいものを飲みたがる
・性格は積極的で、興奮しやすい
・お腹回りにハリがあり、前にせり出している
・便秘ぎみ
・水分も貯めやすい
・病気の進行が早め
実際には実証のみ、虚証のみということはあまりなく、「虚実混合証」であることが多いです。
一応の目安として、肥満体型のうち「太鼓腹のおっさん体型」「りんご型」が実証、「ふっくらマシュマロ体型」「洋ナシ型」が虚証と思えば良いでしょう。
防風通聖散は、この「実証」タイプの人に効くよう生薬が処方されています。
実証の身体は通常の量の脂肪であれば分解・燃焼できるのですが、食べ過ぎ飲み過ぎでその機能がオーバーヒートしてしまい、代謝が追い付かなくなっている状態です。
そのため、熱を下げる生薬や、貯まっている便や尿を強力に排出する生薬が配合されています。
しかし「虚証」の場合、本来の内臓機能が何らかの原因で低下して身体が冷えてしまっているため、少しずつ脂肪が貯まっていっている状態です。
ただでさえ機能が低下しているところに熱を下げる生薬を入れてしまうと、内臓がますます冷えてしまい、脂肪を燃やすことができなくなり、貯まってしまうのです。
それどころが、強力な寫下作用のある生薬によって激しい下痢を起こしてしまったり、水分が滞留したり、貧血を起こしたりしてしまいます。
このことからわかるように、防風通聖散は実証体質の人には良いのですが、虚証の場合副作用が出やすいため、おすすめできません。
防風通聖散は慎重に正しい方法で使いましょう
防風通聖散は、便秘がちで脂肪が多い人用の漢方薬ではありますが、「便秘がち」「脂肪が多い」だけに注目してしまうと、期待した結果が得られません。
自分が実証か虚証か大体の判断をし、虚証に傾いていると感じたら防風通聖散以外の漢方薬で合うものがないか、薬剤師によく相談することをおすすめします。
虚証ぎみではあるけれど便秘がひどいので一度使ってみたいという場合は、説明書をしっかり読み、用法と用量を確認してから試しましょう。
メーカーによって、防風通聖散を飲むタイミングや回数、飲み方には微妙な違いがあります。
例えば最近人気の「生漢箋 防風通聖散」や「EGタイト pure」の場合「1日3回、食前又は食間に水かお湯で服用」となっていますが、ツムラの場合は「食前に」となっていますし、一元製薬の場合は「食前1時間、又は空腹時」と食前の時間を細かく指定しているものの、飲み物の温度や種類については書いていないものもあります。
それぞれ自社の漢方薬を最も効果的に働かせるための飲み方ですから、それをしっかり守りましょう。
また、何らかの副作用と思われる症状が出た場合は、自己判断せず一旦服用を中止し、薬剤師やメーカーに問い合わせましょう。
それができない場合は、まずは様子を見て、症状が収まったら量や回数を減らしてみましょう。
虚証も入っているが実証のほうが強いタイプの場合、量を減らすことで好転する場合もあります。
さらに、他の薬も同時に服用する場合は注意が必要です。
防風通聖散に配合されている生薬の大黄や麻黄、甘草は多量摂取すると体調を崩しやすくなることがわかっています。
下痢が止まらなくなったり、興奮作用で動悸や息切れ、不眠などの症状が出たり、偽アルドステロン症を発症したりすることがあるのです。
それを防ぐために、必ず事前に防風通聖散を飲んでいることを伝え、医師や薬剤師に判断を仰ぎましょう。
防風通聖散は、実証の人が使用すれば高い効果が期待できます。
しかし、単に痩せたい、便秘を治したいという理由で自分の体質を無視して摂取するのは大変危険で、おすすめできません。
漢方薬はサプリメントではなく医薬品ですから、必ず専門家に相談して選んでくださいね。