朝にはすんなり入った靴なのに、夕方にはパンパン…そんなこと、よくありますよね。
飛行機内などで一度脱いだら次に履く時にキツキツになることも、多くの女性が経験していると思います。
その他、顔や脚全体など、目立つところがむくむので女性としては大きな悩みどころ。
なぜ身体はむくんでしまうのか、そしてその改善方法についてご紹介します。
このページの目次
圧倒的に女性の方が多い『むくみ』の悩み
男性にもむくみはありますが、圧倒的に女性のほうが多いといわれています。
泣いた次の朝にまぶたがぷっくり腫れてしまう、夜お酒を結構飲んでから寝ると顔全体がむくむ、ヒールを履いた翌日はいつもの靴が入らない…色々ありますよね。
これがたまになら良いのですが、むくむのが当たり前になってしまっているのであれば、問題です。
生活習慣や食生活が原因となり、肝機能や腎機能が低下していることが多いのです。
中には腎炎や肝硬変、下肢静脈瘤、血栓、甲状腺機能障害などを引き起こしてしまう場合もあります。
むくみに慣れてしまっている女性は、こういった病気が自分に潜んでいることを自覚しましょう。
意外と知らない!?『むくみ』のメカニズム
むくみというと水分の摂り過ぎが原因と思われがちですが、それほど水分を摂っていなくてもむくむことはあります。
ここでは、むくみのメカニズムを簡単に説明しましょう。
細胞と細胞の間には「間質液(かんしつえき)」と呼ばれる液体があり、毛細血管からしみ出す栄養をもらったり、老廃物や有害物質を毛細血管に送り込んだりする働きがあります。
この間質液が増えすぎて毛細血管に戻り切れないと、それが皮膚と皮下脂肪に貯まってしまい、むくみを引き起こすのです。
むくむ原因として考えられるのは?
むくみが起こる原因は様々ありますが、多いのは以下のことです。
①水分やアルコールの過剰摂取
一番単純な原因で、水分を摂り過ぎたことで血管内の水分量が増え、毛細血管からしみ出した間質液の一部が毛細血管に戻れなくなるために起きます。
特にアルコールの場合、最初は尿として排出されるのですが、身体は失った水分を取り戻そうと貯め込み始めます。
また、アルコールの分解には大量の水分が必要なので、さらに水分を体内に貯め込んでしまうのです。
②塩分の摂り過ぎ
塩分の摂り過ぎも原因の一つです。
塩分には水を体内に留める働きがあるため、しょっぱいものが好きな人ほどむくみやすいのです。
お酒のつまみにしょっぱいものを食べるというのは、むくみを悪化させる原因となります。
③カリウムやマグネシウムの摂取不足
カリウムには、摂り過ぎた塩分の排出を促す作用があります。
野菜など多くの食品に含まれているため、通常は不足することはありません。
しかし塩分摂取量が多いと通常のカリウム摂取量ではまかなえず、むくみやすくなります。
また、マグネシウムには塩分の量を調節する働きがありますが、ストレスによって消費されやすいミネラルです。
さらに、食品添加物として多くの食材に含まれるリン酸は、マグネシウムの吸収を阻害してしまいます。
すると血中に塩分が増えてしまい、水分が滞留してしまうのです。
④水分の摂取量が少なすぎる
水分の摂取量が少なすぎる場合も、むくみが起こることがあります。
水分不足によって血行不良になると、毛細血管から染み出た間質液が充分吸収されなくなるため、皮膚内に水分が滞留してしまうのです。
⑤立ち仕事で重力がかかる
立ち仕事や同じ姿勢を取り続けることで起こるのが、脚のむくみです。
血液は心臓のポンプによって全身を巡っていますが、脚は心臓から最も遠い上に重力を受けて間質液がしみ出しやすく戻りにくいのです。
さらに、同じ姿勢を取り続けていると血流が悪くなるため、ますますむくみが悪化します。
⑥運動不足で筋肉量が少ない
血液を移動させるために使われるのは、心臓のポンプの他に筋肉があります。
特に脚の静脈の血液が心臓に戻るためには筋肉の助けが必要で、筋肉量が少ないと血行が悪くなり、むくみが出ます。
女性はホルモンの関係で筋肉がつきにくいため、どうしても脚にむくみが起きやすいのですが、さらに運動不足で筋肉が衰えてしまうとますます血の巡りが悪くなり、むくみが悪化してしまうのです。
⑦リンパ管の働きが低下する
間質液は毛細血管に取り込まれると前述しましたが、一部はリンパ管に回収されます。
リンパ管は主に分子量が大きいタンパク質や老廃物を吸収する役割があり、タンパク質はリンパ管経由で血液に戻されるのです。
このタンパク質の一つにアルブミンがあり、アルブミンは血管内に水分を貯める働きがあります。
しかし、リンパ管の機能が低下するとアルブミンを充分回収することができなくなるため、水分が皮膚内に留まってしまうのです。
⑧アルブミンの量が少ない
アルブミン自体が少なくても、水分を毛細血管やリンパ管に吸収させる働きが弱くなるため、むくみが起こります。
アルブミンはタンパク質が原料となって肝臓で作られますが、タンパク質の摂取不足や肝臓の機能障害などで足りなくなると、むくみが起こるのです。
⑨女性ホルモン(プロゲステロン)の作用
女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンがあります。
プロゲステロンは生理前に多く分泌されるホルモンで、栄養や水分を体内に留める働きがあるため、排卵後からの約2週間はむくみやすくなります。
これは自然なことで、通常は生理が始まる頃には分泌量が減り、むくみは解消されます。
しかし、ストレスなどでホルモンバランスが乱れるとプロゲステロンの作用が強くなり、生理前以外でもむくみやすくなる場合があるのです。
『むくみ』の解消に利尿剤を使うのは危険
これだけ多くの原因がありますから、特に女性はとてもむくみやすいのです。
しかし、最初に書いたようにむくみは腎臓や肝臓の機能不全につながりますから、早めに解消したいもの。
他の病気が潜んでいない場合は、一般的にむくみの解消には利尿剤が処方されます。
ラシックス、イソバイドシロップ、フロセミド、アルダクトンAなどが主なもので、一時的には高い効果があります。
しかし習慣性があるため徐々に効果が弱くなり、より強い薬を処方されないとむくみが治らなくなります。
中には個人輸入でさらに強力な利尿剤を購入してダイエットをしている人もいますが、血圧低下、下痢、嘔吐、頭痛、貧血などの症状が出やすくなり、さらには呼吸困難や再生不良性貧血を引き起こすこともあります。
そのため、利尿剤は医師に相談しながら使用する以外では、お勧めできません。
【防風通聖散】は『むくみ』の解消に効果的?
最近、むくみ解消に効くという漢方薬が評判になっています。
「防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」といい、800年以上前に中国で考え出された処方です。
成分は18種類ありますが、その中にはむくみの解消に効果が期待できる成分がたくさん含まれているのです。
利尿作用のある成分としては連翹(れんぎょう)、白朮(びゃくじゅつ)、滑石(かっせき)などがあります。
また、発汗を促す作用のある防風(ぼうふう)、麻黄(まおう)、薄荷(はっか)、生姜(しょうきょう)、荊芥(けいがい)も含まれています。
汗と尿のダブルで体内に滞留している水分を排出してくれますから、むくみに高い効果が期待できるのです。
使用者の体質によって効果に差があるという声も
ただし、これはあくまで体質に合っている場合です。
漢方薬は一人一人の体質に合わせて処方し、身体を根本から改善していく医学です。
「防風通聖散」は内臓脂肪が多く、固太り系の人、声が大きく活動的、赤ら顔で便秘やむくみのある人に効く処方になっています。
いわゆる「おっさん体型」といわれる、胃からお腹が張り出しているタイプです。
それに対し、多くの女性は皮下脂肪が多く、ぜい肉が柔らかでつかめ、横になると下にお肉が波うって下側に移動するというタイプです。
このタイプの場合、たとえむくみという症状は同じでも、固太り型とは原因が違うことが多いのです。
特に女性の場合は冷えによって内臓の機能が衰え、血行も悪くなって水分代謝力が落ちているのが原因というケースが少なくありません。
そういったタイプの人に防風通聖散を使用すると、利尿効果はあるものの冷え性が悪化してしまうのです。
自分が防風通聖散を使って良いタイプかどうか、簡単なチェック方法があります。
健康診断の時に採尿しますよね。
その時、紙コップなどの容器を持った時、温かいと感じますか?
健康な場合、あるいは体内に熱がこもっている場合、尿の温度は体温より高くなります。
その場合は、防風通聖散が合っている可能性が高いです。
その反面、容器を持った時に熱を感じない、あるいは排尿の際に肌に触れる尿の温度を感じることがない場合、尿は体温と同じかそれ以下の温度になっています。
尿の温度は内臓の温度に比例しているので、尿の温度が低ければ内臓も冷えて機能が低下していることが多いのです。
そのため、防風通聖散を使用すると身体の芯がさらに冷えてしまい、下痢や貧血、嘔吐、頭痛などを引き起こす危険性があります。
さらには下痢によって体力がなくなると免疫力もなくなり、尿道の細菌が膀胱内で繁殖して膀胱炎になったり、その菌が腎臓にまで流れて腎炎などを発症したりすることもあります。
用法や用量を守り、副作用に充分注意しましょう
漢方薬は、体質が合えば優れた効果を発揮します。
しかし、一歩間違えれば上記のように身体を壊してしまいますから、安易な気持ちで使用するのは大変危険です。
漢方薬を副作用がないサプリメントのように考えている人もいますが、それは大きな間違いです。
漢方薬は「薬」という字がつくことからもわかるように、立派な治療薬です。
様々な生薬を配合することで副作用を抑えるようにはなっているものの、全くない訳ではありません。
自分にどの漢方薬が合っているのか、購入前に医師や薬剤師に相談してくださいね。
そして、必ず書かれている用法や用量を守り、1週間程度様子を見ましょう。
防風通聖散の場合、便秘や下痢を起こすようなら合っていない可能性がありますから、購入した薬局で症状を説明し、判断を仰いでください。
また、必ず説明書を熟読するようにしましょう。
防風通聖散の場合、皮膚の発疹やかゆみ、胃部不快感や下痢、腰痛などの症状が起こる可能性が書かれています。
また、まれに間質性肺炎、偽アルドステロン症、肝機能障害など重篤な症状が起こることも明記されていますから、違和感が出たら病院で検査を受けることをお勧めします。
余分な水分が貯まらない、排泄できる身体に改善していくのが漢方です。
確かにむくみは女性に多い症状ですが、適切な方法を取れば改善されていきます。
むくみを取りすっきりボディになるために、自分に合った漢方薬を使用しましょう。